山崎 隆
◆財営コンサルティング株式会社 代表取締役社長
◆CFP®
◆一級ファイナンシャル・プランニング技能士
昭和35年生まれ。学習院大学経済学部経営学科卒。住宅メーカー、生命保険会社、不動産コンサルティング会社を経て、1996年に財営コンサルティング株式会社を設立。
多数の実務経験に基づき、地主・法人向けの収益用マンションの建築等のマーケットリサーチ・企画及びコンサルティングを主業務として顧客の資産マネジメント(累計総資産額1000億円以上)に携わっている。
2005年4月に「株や投資用マンションに無理な投資をしなくても、マイホームを買うだけで十分に資産家になれる」というユニークなコンセプトで「不動産でハッピー・リッチになる方法」(ダイヤモンド社刊)を出版。その後サラリーマンや働く女性等の投資、マイホーム購入相談を開始。
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第3回 「三軒茶屋」 編

1月某日。
今回は「三軒茶屋」を訪れた。

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世田谷通り沿いのパーキングスペースに愛車を停めた。
ランチをとるために、レストランを探し始めた。
途中、レトロな雰囲気が漂う路地裏を発見したので、ちょっと覗いてみる。
吸い込まれるように異空間に入っていく。
まるで、昭和初期にタイムスリップしたようだ。
レストランを探していたのだが、洋食屋という感じか。
換気扇の排煙からは、ディープな油の香りがする。
かつて、ここに、どんな人々が集ったのか…。
イマジネーションをふくらませる。

三軒茶屋周辺の一帯は、もとは農村地帯であり、将軍の鷹場でもあった。
鷹場では、たまにしか訪れない将軍のために鳥類の殺生が禁止されていたので、
周辺の野鳥たちには、安全な暮らしが出来るエリアだったに違いない。
狩場であるにもかかわらず、実態は、サンクチュアリーだったのだ。

そんな鳥たちの楽園も、近代に入り、
玉川電気鉄道の開通と関東大震災を契機に、市街化が進んだ。
戦前の周辺は、陸軍の練兵場や陸軍衛生材料廠があった。
砲兵連隊、重砲兵連隊、機甲整備学校などの部隊の兵営も集中していた。
そういった軍用地の一部は、いまでも防衛省や陸上自衛隊が転用している。
また、昭和女子大や駒場高校、都営住宅にも転用された。
ここも、いずれ六本木ミッドタウンのように開発されるのだろうか。

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三軒茶屋の商店街は、当初、軍人を相手に栄えた街という側面も持っていた。
しかし、同じ軍人相手の商店街と言っても「神楽坂」とはイメージが異なる。
神楽坂は、三宅坂の将校以上を相手にする料亭の街である。
三軒茶屋は、下士官以下を相手にする酒場の街である。
きっと酒場の周囲では、上等兵が新兵を鉄拳制裁するような、
そういう日常が繰り返される喧噪の街だったはずである。
だから、街の品格が違う。三軒茶屋に芸者はいない。

路地裏を徘徊していると、どこからか怒声が聞こえた。
「山崎二等兵!貴様、たるんどるぞ!」。空耳か?
そして、路地裏を抜けた。そこには、我にかえる自分がいた。

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そうこうしているうちに「喰うてけへんか?すずらん通り」の看板が見えた。
この通りは、パチンコ店や、今どきキャバレー(?)も隣接する飲食店街だ。
その中で唯一、瀟洒な雰囲気のビストロに入った。
生真面目そうな店長らしき人が、注文をきく。
そのうち、周辺のOLたちで満席になっていった。

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女性が苦手な私は、周波数の高い音声に包囲されて、
居心地が良いはずも無く、萎縮しながらフォークを動かした。
いまやオッサン化している我が女性アシスタントも、
どちらかというと無口なので、不快感をあらわににしている。
「サッサとメシ食って、もう店を出よう…」。

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三軒茶屋を勘違いしている人がいる。
ここは、おしゃれな街なんかではない。
庶民的というか、実は世田谷区の下町である。
渋谷からの利便性に加え、バス路線も多く交通利便性に優れているが、
賃貸マーケットとして分析した場合、
アッパーミドルクラスや富裕層の子育てファミリーには人気が無い。
むしろ、シングル層からの人気が圧倒的に高い。
だから三軒茶屋でマンションの資産価値を考えるなら、
大型ファミリータイプではなく、専用面積が小さなタイプの方が効率的である。

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これから、ワンルームを管理する不動産業者の社長との打ち合わせだ。
三茶のシンボル(?)のキャロットタワーを横目に見ながら、
颯爽と愛車に乗ろうとしたら、ガードレールを跨げなかった。
やはり私の足は、客観的に分析すると、短いのかもしれない…。


第2回 「芝浦」 編

11月某日、久しぶりに芝浦界隈を歩いてみることにした。

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JR田町駅の東側に展開するこのエリアは、運河に囲まれた埋立地である。
高層マンション、オフィスビル、工場、倉庫などが建ち並ぶ。

一見、閑散とした印象を与えるこの街は、江戸時代から明治にかけては、
地元でとれる芝海老や黒鯛などの海産物が食べられる料亭が
軒を連ねていた。
花街としても賑わっていたらしい。
竹芝橋を背にトボトボと歩いていると、無表情なミュージシャンに遭遇した。
話しかけてみたが、やはり無愛想だった。
仕方がないので、記念撮影に協力してもらった。

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そのまま川沿いを徘徊していると、もの想いに耽るユリカモメに出会った。
いまにも川に飛び込みそうな眼差しで、何か悩み事でもあるのだろうか。
でも、水鳥でも、溺れることは可能なのだろうか。

その先には、URと三井不動産が開発した芝浦アイランドが見える。
あの場所は、戦前から都電の操車場や製糖工場があった場所だ。

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現在の芝浦は、大正時代からの埋立地なので、
浚渫(しゅんせつ)による砂や砂利で埋立てられている。
現在進行形の埋立地のような、ゴミで埋め立てられたものではないはずだ。
従って、地盤沈下の心配も少ないだろう。


昨今このような倉庫街の跡地には、ビルやマンションが続々と建設されている。
この街も、大きく変わっていくのだろう。
でも、ふと、芝浦エリアの地盤沈下の程度が気になった。

過去の地盤沈下のスピードチェックするのは簡単である。
まず、調査したいエリア付近で、階数が高く、古い建物を探す。
そして、登記簿謄本をあげて、建物の築年数を調べる。

建物の基礎周りの補修跡の幅を、その築年数で割る。
築20年で10センチなら、年間5ミリである。

ちょうど、築25年の秀和レデンンスがあったが、
殆ど補修跡がみつからないので、あまり地盤沈下していないようだ。

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芝浦の地盤は、埋立地にしては意外と良好だ。
古い埋立地なので、表層部の地層もひきしまっている。
やはり、埋立地は、ヴィンテージものに限る。

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ふと、川の匂いが臭くないことに気づいた。
この辺りは、下水処理場もあり、昔は臭かったものだが、今は違う。
それを確認すべく、川を覗き込んでみた。
ナント、水の透明度が高く、川底が見える。

川を汚すような工場は、中国やアジアの各地に移設されているので、
かつてのどぶ川は、きれいになっている。

でも、そういう発展途上国の川は、どうなっているのだろうか。
大好きな上海ガニは、汚染されていないのだろうか。
そうだ。帰ったら、グーグルアースで見てみよう。

私的というか、偽善的な心配をしながら、歩き続けると、
今度は、謎めいた、異様なデザインのビジネスホテル(?)を発見した。

川沿いにひっそりと建つこのホテルは、街の雰囲気から浮いている。
あたりを見回すが、答えのヒントとなる人は歩いていない。
誰が、何の目的で、此処に泊まるのか…。

そう自問自答している間に、我が敏腕アシスタントがパンフレットを拝借してきた。
そこには「ビジネス&ヒーリング・デザイナーズ・ホテル」と書かれている。
「ん~、やはり、わからん…」。

結局、答えが出なかったので、今度、泊まりにきてみようと思った。
でも、一人で泊まるのは、ちと寂しい。どうしよう…。
妄想に囚われつつ、直列6気筒の愛車に戻る途中、
花街の名残であろうか、数隻の屋形船を横目に見る。

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途中、大きな工事現場があった。
東京ガスが、備蓄用タンク群の跡地に何かを建設しているようだ。
また、オフィスビルが建つのだろうか…。

かつて、西新宿をはじめ、都内のあちこちにはガスタンクがあった。
それが、どんどん消えているが、どこに消えたのだろうか。
たぶん、新たな埋立地なのだろう。

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帰路につく途中、ヤナセ・ショールームの前を通過した。
しかし、なぜか気になって、ユーターンをしてしまった。
寄り道の、寄り道…。

shibaura_10.jpgヤナセの設立は、大正4年である。

かつては輸入車ディーラーの独占的な地位を占めていたが、現在は競合も多い。
ショールームに入るとベンツやキャデラック、アウディなどが所狭しと並んでいる。

メカが大好きな私は、いつしか、陳列されている車が気になり出した。
エンジン、サスペンション、ミッション…。
アシスタント曰く「まるで整備士のような眼光に変わっていた」そうだ。

そんな私を、営業マンが放置しておくはずもなく、
気がつくと、つぼを押さえたセールストークに聞き入っていた。
あわや衝動的に四駆のアウディを購入しそうになったところで、
アシスタントの冷たい視線を感じた。

「営業マンは、営業マンに弱い」とは、よく言ったものだ。
その日は、パンフレットだけをもらい、店をあとにすることにした。
途中、かつてジュリアナがあった場所のわきを抜けて帰途につく。
かのグッドウィルの折口雅博氏が、日商岩井時代に倉庫を転用して立ち上げたディスコである。
その頃、一度だけ彼と飲みに行ったことがあるが、
とても頭がキレる人だったという印象だけが残っている。
そういえば、六本木ベルファーレのVIPルームも確保してもらったなあ…。

しかし私は、ある日のこと、踊る自分の鏡に映る姿に吐き気がして、
もう乱痴気騒ぎは、やめてしまった。醜態は、公害である。
それとも、どう見ても腹が出過ぎていると感じたのは、気のせいだったのか…。

いつしか日も暮れてしまった…。
会社に戻って、もうひと仕事、片付けなければならない…。

 

 
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