昨日オーナーズクラブにて当社顧問弁護士の高久先生より、現在賃貸市場の大きな
問題となっている更新料問題について講義いただきました。
私自身も当然業務ですから問題を理解していたつもりではありましたが、その理解が断片的
であることに気づき、体系だった理解をすることができましたので、私なりにまとめてみたいと
思います。
<更新料問題とは>
賃料以外に2年に1回もしくは1年に1回、契約の更新をする際に賃借人が賃貸人に支払う
更新の対価である更新料が、昨年以降複数の裁判で認められないという判決が出ていて
今後アパートオーナーが更新料をどのように扱っていくかという問題
また、現在最高裁判所の判決を待つ状況にあり、判決いかんでは、入居者からの訴訟が起き
過去にさかのぼって更新料の返還を要求される動きになる可能性を含んでいるため、アパート
オーナーにとっては非常に大きな問題となっている
<判決の事例>
京都地裁 平成21年7月23日判決(無効)
大阪高裁 平成21年8月27日判決(無効)
京都地裁 平成21年9月25日判決(無効)
京都地裁 平成21年9月25日判決(無効)
京都地裁 平成21年9月25日判決(無効)
大阪高裁 平成21年10月29日判決(有効)
ご覧いただければ分かる通り、関西圏に集中していることが一つ挙げられます。
これは、関西の更新料が関東に比較し、商慣習として非常に高額となっているという
背景があります。
そして、大阪高裁にて、有効と無効の全く正反対の判決が出ていることも注目されています。
最終的には最高裁の判決を待つ状況(早ければ今年中、もしくは来年に出る予定)
<更新料の有効・無効の根拠>
更新料の問題を考えるときに以下の3つの要素(法律)が絡み合って問題となっている
①契約自由の原則
②借地借家法
③消費者契約法
普通の商取引においては、お互いに契約(取り決め)したことが有効というのが当たり前です。
資本主義社会の原点とも言えます。
それが、この問題を複雑にする背景には、借地借家法という借主の権利が極端に強く認め
られている法律があること
平成13年4月1日施行の消費者保護法という法律により、また平成21年9月1日設立の
消費者庁の影響により、社会的に消費者保護の流れが急拡大していること
が挙げられます。
②③の法律を根拠として、お互いに取り決めた内容が、認められないという状況にあります。
<更新料の対価(支払いの合理性)>
上記のとおり、①契約自由の原則が認められないという状況においては、裁判においてその
更新料の支払いに合理性が求められています。
要は、お互いに取り決めて契約に書いてあるけれども、②③に違反している可能性があるの
だから、更新料を支払う明確な理由、更新料を支払う合理性を明確にしろということに
なっているのです。
①賃料の前払いまたは後払い、賃料の補充
②更新拒絶権放棄の対価(紛争解決金)
③更新後の契約期間の確保(賃借権強化の対価)
という更新料が持つであるとされる3つの要素によって、有効とされてきた経緯はあります。
それが、今年になってことごとく否定されているという状況です。
詳細は割愛しますが、どれも主張するには弱いというのはよくわかります。
例えば、②の更新拒絶権の放棄といったところで、現行借地借家法において、貸主側が
更新を拒絶するためには自分が住まざるを得ないという正当事由が必要になりますので
事実上更新拒絶はそもそもできません。
ですので、対価というのはおかしいだろうという論法です。
<今後の方針>
では、上記のような状況を踏まえてアパートオーナーとしてどのように対応していくのか
というのが重要なところです。
①引き続き更新料を取り続ける
②更新料をとらない
という大きくは二つの選択肢になります。
①の場合は、最悪入居者からの訴訟によって、過去にさかのぼって更新料を請求される恐れ
があります。(過去 平成13年4月1日)
もちろん、入居者からの訴えがあった場合の話ですので、訴えがなければ、例え最高裁の
判決が無効となっても支払い義務はありません。
そして、更新料をとるがそのリスクを少なくするためには、上記の支払いの合理性を契約書
に明記するという方法があります。
但し、現実的には、理屈としては若干弱いので、借主に納得してもらえるか、そして裁判で
どこまで有効かという問題は残ります。
②の今後更新料を取らないようににするということです。
厳密には、更新料の定めのある既存入居者に対しても更新料を免除するのか、それとも
今後入居する入居者に対してのみ更新料をなくすのかという二通りあります。
但し、更新料は家賃収入の5%~10%にあたりますので、その分の家賃を上乗せできれば
良いですが、できない場合は、単純にアパートオーナーにとっての減収となりますので
痛いところです。
また、取らないようにして、定期借家契約にして、再契約時に契約料として取るという方法も
ありますが、定期借家がまだ普及していないため、入居付けに苦労します。
そして、定期借家で入れる場合は、相場家賃から1割程度は安くせざるを得ないという
事情があります。
エリアによっても対応方法が変わってきます。
関西圏と関東圏の違いが大きなところです。
<私の考え方>
以上が更新料に関する事実関係ですが、以下私の考え方及び対応方針を書きます。
あくまでも私見ですのでその辺はご了承ください。
基本的には、資本主義の大原則である契約自由の原則を踏みにじり、弱者保護という名の
もとに社会主義化を促進し、きちんとした商取引を妨害する一連の更新料無効判決に対しては
断固として戦うべきであるというスタンスです。
まして、現在は賃貸市場においては、空室率上昇の問題によって、借地借家法は形骸化して
いて現代の商取引のおいてはそぐわないと考えられます。
また、現在の情報時代においては、誰でもが簡単に情報を得られる状況においては、無効判決の
根拠とされている消費者契約法第10条に定める消費者が一方的に情報が少なく不利益を被るこ
ともなく、この点からもおかしいと考えるからです。
しかし、一方で市場競争的観点からみると供給過多の市場動向を強めているアパートマンション
賃貸市場においては完全に借りて優位の時代となっています。
いったん入居者が出てしまえば、次の入居者を見つけるまでの空室期間が発生し、リフォーム
工事費用が発生し、継続賃料が下落傾向にある状況においては、過去の入居者と同じ賃料を
得ること が難しくなっています。
とすると、オーナーの利益を考えた場合、既存の入居者に退去してもらわないで長く住み続けて
もらうことが最も効率が良く、利益が上がる構造となっています。
すると、更新料を取らないことで、入居者の長期入居促進につながり、オーナーの利益確保
となることが考えられます。
ということで、今後の方針とすると、更新料無効判決を連発する一連の判決には非常に疑問
を感じ、既存入居者からの訴えに対しては断固として戦う姿勢を取るが、一方で市場競争の
原理に立つと今後は更新料を取らないという選択肢が経営上の利益最大化につながるの
ではないかと考えます。

