間違って買ってしまった17万円のシャワーユニット。
しかし、売主に連絡し、対策を聞く。
「いやあ、寸法が合わないなら上部を切ってしまって・・・」
「えっ、切ってもだいじょうぶですか?」
「うちらは、そういう工事だいぶやってますんでね。(おいおい)」
もう、迷いはしなかった。
切断砥石をつけた丸ノコがギャーンと音を立てる。
ステンレスの支柱に当てた瞬間、ものすごい火花。
ビビル。
もうすごい勢いで丸ノコを操る。
しかし、丸ノコで初めて切るものが、壁とか、ステンレスという、ちょっと生活離れしたものなのが、自分でもおかしい。
見事切断!天井ぴったりに収まる。あとは設計図とにらめっこ。
「この説明書ずいぶん不親切だよね〜。」
と妻。当たり前だ。初めて作る人用にかかれてはいないのだから・・・
みようみまねでかたちが仕上がっていく。
壁をつけたらもう日曜日の夕暮れ。明日は本業がある。
あせるが完成期日がせまっていた。やるしかない。
コーキングをうつ。
もう全身真っ白になりながらの塗布作業。
コーキングは服につけるとまったく落ちない。
(当たり前だ。水で溶けるとコーキングにならない)。
ズボン1本廃棄・・・・。
新品っぽかった作業服も、見事に玄人様式に汚れた。
完成するまで6時間かかったが、予想以上の早さであった。(玄人で4時間といわれていた)
完成してみると、それはもうどこから見ても、プロが作ったとしか思えない出来栄え。
無意味に出たり入ったりしてよろこぶ。
この部屋は、このアパート最高の部屋となった。
備え付ける電化製品も運び入れる。
作業道具を片付け、水を落とし、ブレーカーを切ろうとしたとき、
ふと、冷蔵庫や電子レンジが見えた。
この電子レンジと冷蔵庫は、私が大学進学の際、両親が買ってくれたものだ。
10年間使い続け、結婚を機に廃棄するところを、アパートに持ってきたものだった。
考えてみたら、この電化製品が私のアパート経営の発端だった。
大学2浪もしたのに、私にこれだけそろえてくれた、本当はけちな両親。
一度捨てたブレーキの壊れた自転車も、ごみステーションから拾って戻してしまうほどの両親が、妹と私のために2台づつ新品の電化製品をそろえてくれたのだ。
買い物にいっしょに行き、その様子を見たとき、申し訳ない気持ちでいっぱいになり、
「なぜ、何でも買わないといけないのか。なんでこんなにお金がかかるのか。」
そう思って悔しかった。
敷金とか、そんなものもなし。電化製品もそろっている。布団さえあれば、即入居できる。そんな親孝行なアパートはないものか。
できたら、きっとそのアパートは成功する。そう思ったのが、アパートをやりたいと思ったきっかけだった。
この部屋で寝泊りし、トイレ掃除をいやいややり、生まれて初めての壁紙・クッションフロア・タイルカーペット付けを行った。妻にけんかをふっかけたのも、妻と酔っ払って深夜帰ってくるのもこの部屋だった。
正直、私の電化製品は古いのだが、そのまま、この部屋においておくことにした。
この部屋で私たちの仕事は始まったのだった。
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